Foto © Ken'ichi Suzuki
Foto © MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO
Foto © Ken'ichi Suzuki
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Tree house

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Sede
東京, Japan
Anno
2009

都内北部の穏やかな丘陵地上の住宅地内に計画された、夫婦二人の為の住居。
丘の頂部近くの旗竿型の敷地で、地盤は竿から旗へと緩く上っていく。周囲を隣家に囲い込まれ、旗竿地特有の薄暗さや圧迫感もあったが、それよりも少し街か ら奥まった外部に晒されていない深部といった場の性格が意識された。この様な情況では、余地の少ない水平方向へ向かうより、地勢的にも垂直方向への展開が 相応しい。それは森の深部で、他の木々に囲まれた樹木がとる指向性と同様の理由による。
通常の建築で用いられる「直交座標系」の幾何学は一定方向への反復展開性に優れているが、前述のようにここではその必要はない。むしろ、周辺との微妙で緊 密なバランスを拾うことのできる幾何学の方が望ましく、中心とそこからの距離と角度によって位置を記述する「極座標系」を、建築を規定する幾何学として用 いる事にした(例えば、2次元のボロノイ分割図を思い浮かべてもらいたい)。
具体的には、51mm厚のLVLからなる門型の「柱ー梁」構造を、11.25°(360°/32flame)の角度を保って回転複製することで建築は構成 される。各フレームは各々隣よりも55mm程高いので、一周すると1.7mの高低差が生まれることになる。これは滑らかなHP曲面の屋上テラスへの出入口 になるのと同時に、東側に一部だけ開かれた空と、隣家の緑を借景として取り込むハイサイドライトとなっている。
また、極座標の中心には32本のLVL柱が集中し、直径約1.1mの大きな大黒柱が形成される。伝統的な田の字型平面の民家と同様に室内はこの大黒柱で4 つに分節されるが、極座標に基づいているので分節は90°に限られない。また、中心を平面的に偏芯した位置に設定する事で外周線からの距離に差が生じ、回 転角度は一定なので、中心からより離れた外側の柱は間隔が大きく、近い柱はより密になり、螺旋状に上昇する架構によって生じる天井高の変化に加えて、室内 に性格が与えられる。例えば、より柱間が小さく天井の低い親密な暗がりは眠る場所に、より大きな柱間で大開口も取れる明るく天井も高い領域は食事の場に相 応しい、といった具合に。床高もまた、大黒柱による分節に沿ってスキップしているが、これは敷地の元の地形によっている。
完成した住居は厳密な幾何学による建築ではあるが、どこか人工物とは言いきれない風情を持つことになった。大黒柱に背をつけてその足元に座り、上を仰ぐと放射状に伸びる梁が枝を広げた大きな樹木のように思えてくる。
樹幹の様な大黒柱の周囲には、安心して暮らしていく「住む場所」が広がっている。「住宅」と名付けられた透明な「空間」とは、なにか異なる質がここにはある。
「空間」の中心には社会的な「意味」があるが、「場所」の中心には「存在」がある、という事なのだろう。

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